何か新しそうな方法を思いついたとき、これは特許を取れるのかと、疑問に思ったことがある方もいると思います。しかし、特許公報を読んでも文章が分かりにくいため取っつき辛く、特許取得条件もきっとややこしいのだろうと考えている方もいるのではないでしょうか。今回は、特許取得するために必要な条件と、ポイントとなる「進歩性」について、簡単に説明します。
1. 特許を受けるための条件
以下の5つの特許要件を満たす必要があります。
① 産業上の利用可能性がある
② 新規性がある
③ 進歩性がある
④ 先願である
⑤ 公序良俗に反しない
①ですが、特許は産業の発展のために作られたもののため、産業上の利用可能性が無いものは特許として認められません。例えば、学問のみに閉じてしまう内容や、明らかに実施不可能な内容です。
一例として、「オゾン層減少に伴う紫外線の増加を防ぐために、地球表面全体を紫外線吸収プラスチックフイルムで覆う方法」を仮に思いついたとしても、実施不可能です。
②④は、特許と言われて一番イメージしやすい内容ではないかと思います。客観的に新しいものを、誰よりも先に出願するのは勿論必要です。
2. 進歩性とは
③の進歩性はややこしく、進歩性の無さにより、特許拒絶される例は多いようです。
先行技術に基づいて、容易に成し遂げられないものにのみ、進歩性があると認められます。
仮に進歩性が条件に無い場合、些細な改善、改良が特許で抑えられてしまうために自由に実施出来ず、産業の発展を妨げる可能性があるため、新規性に加えて進歩性についても条件になっています。
進歩性無しと判断される主要因を、以下に4つ示します。
【Ⅰ】既存の物の、最適値、最適材料選択、設計変更
既にベースがあるものを調整するイメージのため、発明ではないとの解釈です。
【Ⅱ】単なる寄せ集め
既存技術を寄せ集めただけで、その寄せ集めによって+αの相乗効果を発揮できなければ、実質的に意味は無いと解釈されます。
【Ⅲ】関連性の高い技術分野での解決法の適用
関連性の高い技術分野の技術を調査し、適用しようとするのは自然な考えであり、当業者であれば十分成しえると判断されます。
《過去の例》
例1)
スロットマシンとパチンコゲーム機はいずれも遊戯ゲーム機であり、技術分野の関連性が高く、パチンコゲーム機における打止解除装置のスロットマシンへの適用は、容易に想到できる。
例2)
A:アドレス帳の宛先を、ユーザーが設定した重要度に応じて並べ替える電話装置
B:アドレス帳の宛先を、通信頻度に応じて並べ替えるファクシミリ
という既存発明に対して、
「アドレス帳の宛先を、通信頻度に応じて並べ替える電話装置」は、アドレス帳を備えた通信装置という点でAとBが共通しているため、容易に想到できる。
しかし、新しい技術も、構成要素に分解してしまえば既にあるものが多く、技術分野が関連しているからと言って拒絶してしまうと、多くの技術が進歩性無しになってしまうため、他観点も考慮して総合的に判断するようです。
【Ⅳ】共通課題の解決法の適用
共通の課題を解決している技術があれば、それを適用しようとするのも自然な行動であるとの解釈です。
《過去の例》
A:殻割部がある調理はさみ
B:栓抜き部があるベティナイフ
という既存発明に対する「栓抜きがある調理はさみ」だが、
調理はさみやナイフなどの調理器具において多機能化を図ることは、調理器具における共通の自明な課題のため、容易に想到できる。
私は特許の専門家ではありませんが、上記【Ⅰ】~【Ⅳ】以外にも観点はあり、細かいながらも納得感のある内容、決まりが多いように感じます。
そのため、その発明は本質的に進歩と言えるのかという問いに対して、直感的にいまひとつな感覚があるのであれば、進歩性は無いと判断されるどこかに引っかかる可能性は高いのだろうと、個人的には思っています。
以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
執筆:開発部T